タバコが健康に悪いことは、皆さんよくご存知ですよね。

「いつかやめなくては」と思っている喫煙者の方も多いのでは。患者さんの将来のお口の健康を守るために、医師だけではなく、私たち歯科医師や歯科衛生士も禁煙を強くおすすめしています。

年が明け、正月気分も一掃、喫煙されている方はぜひ禁煙を考えてみてください。

 

■タバコでどんな影響がある?

喫煙は、歯周病になりやすく重症化しやすい、治療をしても回復が遅く治りにくい、口臭の原因になる舌苔(ぜったい)が付きやすい等をもたらします。

近年の研究で、お口の歯垢(食べかす)に似せた細菌にタバコエキスを垂らすと、歯周病菌がより攻撃的な毒素を出すことが分かりました。むし歯菌も同様、糖を吸収することで酸を作り出し、酸によって歯が溶けむし歯ができる、といった悪循環が起きます。この状態では、治療をしても思うように回復せず、一度良くなっても再発しやすくなってしまいます。

禁煙をすると、途端に悪玉菌が穏やかになり、パワーも衰えることが確認されています。悪玉菌が減ると治療後の再発が減り、予防もグッとしやすくなります。禁煙に遅すぎるということはありませんので、ぜひ今からでも始めて今後の食生活や健康を守っていきましょう。

■タバコを吸う家庭のお子さんにむし歯が多いことが分かってきました

ある研究によると、家族が喫煙しない子どもに比べて、喫煙する家族がいる子どもがむし歯になるリスクは、母親の喫煙で2.3倍、父親の喫煙で1.5倍という結果が分かりました。子どもと接する時間が長い母親の喫煙の方が影響が大きいと見られます。

むし歯がうつる原因として、

①親の口の中に、タバコの刺激で悪玉化したむし歯菌がひそんでいて子どもに感染した

②子どもの免疫力が受動喫煙によって落ちているため、早い時期にむし歯菌に感染した

などいくつか考えられます。

また歯ぐきの細胞はタバコに敏感で、子どもでも受動喫煙によって歯ぐきの色素沈着も増えてしまいます。

■さいごに

患者さんに「禁煙をはじめませんか?」をお声がけすると、不愉快な気持ちになる方もおられるかもしれません。しかし、本来であれば治療がスムーズに終わる場合でも、喫煙のせいで効果が薄れたり機会を失っていると、患者さんの治療に責任がある私たちとしては、やはり「禁煙しませんか?」と伝えざるを得ないのです。歯科は制度上、禁煙外来のように直接的に禁煙の治療をすることはできませんが、「いつか禁煙したい(けれどすぐに始める気はない)」という方へ、お声がけできるのが歯科医院だと考えています。 

生涯自分の歯でおいしく食べられるように、そして将来のからだの健康のために、今年こそタバコとさよならしましょう。